あの加藤とあの課長
中に入ると、外観と同じく中もまったく変わっていなかった。



「いらっしゃいませー、って、あらまぁ!」

「こんにちは、お久しぶりです。」

「陽萌ちゃう? えっ、もしかして恵也やったりする?」



おばちゃんは私たちを見てすぐに気が付いたようだ。

おばちゃんも変わってないなぁ…。



「2人してー、なんやなんや、結婚のご挨拶かー?」



なんておちょくるもんだから、恵也が不貞腐れてしまった。

おばちゃんは、私たちが別れたことを知らないでいる。もうかれこれ10年も前の話だけど。



「違うよー、私たちたまたま2人とも大阪に戻ってきてるの。」

「今は会社の同僚や。」

「そういうこと。私たちはもう10年も前に終わってるから。」



私たちが顔を見合わせて笑うと、おばちゃんは「そうなんかー。」なんて漏らしていた。



「ほな、どうしたん、2人揃いも揃って。」

「あ、そうそう、髪の毛切って欲しくて…。」

「またやられたんかー?」



おばちゃんはお団子にしていた私の髪を下ろすと、切られた部分に触れた。


昔、恵也と付き合ってたときも、何度かこんなことがあった。

その度におばちゃんにはお世話になって。
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