あの加藤とあの課長

節操なしの困惑

なんとなく終わってしまった金曜日と、なんとなく終わってしまった今日…土曜日。

気まずさは、残ったまま。


問題も、残ったまま。

迎えに来た新幹線のホームに新幹線が滑り込んでくるのを見たら、そんなの忘れてしまったけど。



「源…！」



その姿を見つけて笑顔になってしまったのはもちろんのこと。

すぐに駆け寄ってその胸に飛び込んでしまった。



「お前なぁ…。」



苦笑しながら耳に当てていたケータイをスーツのポケットに締まった。



「相手が仕事相手だったらどうするんだ。今回はお前だったからよかったものの。」

「えへへ、ごめんね。」



私を注意する言葉は聞こえこそ厳しいけれど、その声音はいつも通り優しい。



「噂のストレートか。」



抱きついた私の髪を撫でて、源はポツリと呟いた。

その手が心地よくて、このまま寝てしまいそう。



「なんだか若返ったな。」

「それ、皆に言われる…。」



顔を見合わせて笑うと、源は私の手を握った。



「久しぶりだと思えないな…。」

「なんか、私も。」



もう片手でスーツケースを引きながら、源はホームの階段を降り始めた。
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