あの加藤とあの課長
「あ…。」



再び灰皿に目をやって気が付いた。

吸い殻が、灰皿に残ったままになっていた。



「…怒るつもりなんてない。お前は立派な大人だ。ただ、頼むから自分を大事にしてくれ。」



源に言わせると、私は相当自分を大事にできていないらしい。

ご飯のことといい、私は源に心配をかけすぎてる。



「ごめんなさい…。」

「陽萌…?」

「私、源に心配かけてばっかりだね。」



情けないなぁ。でも、人と付き合うって、こういうことなんだ。

しゅんとして俯いた私に、源は笑った。



「心配するのは当然だろ、俺はお前の彼氏なんだから。」

「源…。」

「…正直心配しすぎて、過保護すぎる口うるさい親父みたいだとは思うけどな。」



その言葉に思わず笑うと、源は困ったように笑った。

そんな源が愛しくて、私は思い切り源に抱き付いた。私を抱き締め返す腕が優しい。



私を抱き締める腕が、
私に触れる手が、
愛を紡ぐ声が、
時折思い出したようにキスする唇が、

堪らなく愛しくて。


いつも私は、涙を流すんだ。


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