あの加藤とあの課長
「東京の本社から来た、生渕 源だ。本社では営業部の課長をやってる。」



月曜日、一緒に出社すると、勿論ながら好奇の眼差しを向けられた。

けどまぁ、お互いに慣れがあるもので。


源も私も至って普通。



「お前たちがちゃんとやってるか視察しに来た。明日の終業までだが、よろしく頼む。」



見とれる女性社員がいる中、ボソッと呟いた女性社員が1人いた。



「加藤さんの本命ね。」



振り返ると、先日トイレで私の髪を切った女性社員だった。

何やら嫌らしい笑みを浮かべている。



「…面白くなりそうね。」



ふふんと鼻を鳴らすその顔はどことなく得意気で、嫌な予感を掻き立てるには十分だった。



「この2日間、俺の補佐を、加藤。」



そこで源は私の方に顔を向けて言った。



「頼めるか。」

「はい。」



ほら、いつも通り。
私に選ばせているようで、その選択肢はない。

なんだか落ち着く。



「ほな、皆、仕事に取り掛かってくれ。」



部長の声を皮切りに、皆が一斉に動き出す。



「生渕課長、私たちは何を。」

「俺たちは建設中の店舗の見回り、営業部の様子見だ。」

「…それって、私、必要なんでしょうか。」
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