あの加藤とあの課長
正直、私がいなくとも、源1人で十二分に足りてしまうんじゃないだろうか。



「いや、いらないな。」



会社ということもあり、ポーカーフェイスを崩ずに、源は資料を見ながらサラリと言った。

そんなサラッと言わなくても…!



「じゃあ、どうして…。」

「分からないのか?」



やっと私に移したその表情からは相変わらず何も読み取れない。

とは言え、私もポーカーフェイスを崩すことはないから彼のことは言えない。



「お前なしでどこまで機能するか様子を見るためだ、あそこがな。」



と言いながら、高山課長と恵也を目だけで見る。



「…後は車で話す。社用車を使う、鍵を取ってきてくれ。」

「はい。」



鍵を取りに行くと、途中であの女性社員に捕まった。



「アンタの彼、公私の混同を平気でする人なんやなぁ?」

「…。」

「いい男やけどー…、駄目やねぇ。偉そうやし、公私混同は論外やわ。」



源のことを何も知らないくせに。


そう言ってやりたかったけど、駄目。源はそんなこと、望んでない。

源は仕事で納得させようとするはず。


何より、くだらない。



「そんなことを言っている暇があったら、さっさと仕事をしなさい。あと、この前も注意したはずだけど、敬語。私たち営業は会社の顔なのよ? 外でボロが出ないよう、気を付けなさい。」
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