あの加藤とあの課長
悔しそうに顔を歪める彼女を放っておいて、私は鍵を取った。



「なかなか言うな、お前。」



オフィスを出て駐車場に向かいながら源がポツリと言う。



「聞こえてました?」

「少しな。」



車に乗り込むと、源は軽快な手さばきで車を発車させた。

相変わらず私は助手席。



「さっきの続きだが、あのペアは正直少し心配だ。」

「高山課長と恵也のことですか?」

「あぁ。高山はコネ入社だからな…。」

「やっぱりそこ、気になりますよね…。」



私も気になっているところだ。

実際、彼が仕事面でどうなのかは、よく分からない。


今回の人事も、親の権力に物を言わせただけなのではないかと心配でならない。



「…お前が帰ってくるのも、わりと先になるかもしれないな…。」



そう言って、源は私の頭を軽く撫でた。



「もう…、仕事中だよ?」

「2日間お前を独占。」

「土日だってしたでしょ。」

「足りない。」



ポーカーフェイスを崩さずに言うもんだから少しリアクションに困るけど。

嬉しいことに、代わりはない。
< 277 / 474 >

この作品をシェア

pagetop