あの加藤とあの課長
その後ろには、困惑の色を浮かべた恵也の姿があった。



「三富さん…？」



不思議に思い私が席を立ったと同時に、恵也がドアを閉めた。


かと思うと、次の瞬間には源が恵也の胸倉を掴んで壁に叩きつけていた。

思わず壁がガラスでなくコンクリートであることに安心してしまった。



「源っ…！？」



源は物凄い剣幕で恵也に詰め寄ると、ドスの効いた低い声を出した。



「お前、あの女どもを平気でのさばらせるな…！！」



女ども…？

突然のことに呆然とする私を他所に、恵也はその意味を理解したらしく言葉を詰まらせた。



「お前は上司だろ、部下を取り締まれ！」

「源っ、どうしたのよ！」



源の腕を掴んで源を止めに入ると、「離せ」と静かに言われた。

怯んだのは私だけでなく、恵也も同じだった。



「お前のせいで陽萌がどんな目に遭ってんのか分かってんのか！？」

「っ…。」



今にも殴りかかりそうな源のお腹に後ろから腕を回して、何とか引き離す。



「止めてよっ、源！」

「離せ、陽萌。」

「やだ…！」



源の言う意味が分かった。

源はあの女性社員のことを言っているんだ。


何があったかは分からないけど、ここに来てから私が女性社員とトラブルになっていることを知ってしまったんだろう。


心配かけまいと、言っていなかったことを後悔した。
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