あの加藤とあの課長
「恵也は、ちゃんとあの女性社員に言ってくれたよ、あの日に…!」

「…お前、なんで庇えんだよっ。」

「だって!」



私の叫び声に言葉を詰まらせた源は、私をじっと見つめる。



「恵也は、ちゃんと言ってくれたよ。それに、これは私と彼女の戦いなの。恵也が発端だとしても、この事自体に恵也は関係ない。」



私は拳をグッと握り締めて続けた。



「私、負けないよ? 勝つとかそういう問題じゃないけど…、でも、こんなことで駄目になったりしないから。」



源を見上げて微笑むと、源は困ったように顔を歪ませて俯いた。

恵也に目で合図すると、恵也は静かに部屋を出ていった。



「…お前は、強いな。」

「源がそうやっていてくれるから、強くいれるんだよ。」



悔しそうに歪めた顔を隠すように、片手の平で顔を覆った。


私のために。

このことが取り上げられてしまったら確実にまずいのに、その危険を犯しても立ち向かってくれる。


源を抱き締めると、片腕で抱き締め返される。



「ありがとう、源。」



側にいてあげられない。
側で守ってあげられない。

きっと、それが源を弱くしてるんだ。
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