あの加藤とあの課長
「あ、あのねっ、敏ちゃんと煌と晋ちゃん、それから増田ちゃんのもあるから、持ってってね!」

「ん? 分かった。」



源の以外は日が経つと思ったから市販のものにしておいた。

それに、源が拗ねちゃいそうだしね。



「ね、1個ちょーうだいっ。」

「ほら。」



口を開けて待つ私の口に、源がチョコを1つ放り込んだ。

するとホッとしたのが伝わったらしく、源は意地悪くニヤリと笑った。



「口移しなんてしないぞ。」

「なっ…!」

「して欲しかったのか? いい歳こいた大人が何やってんだって思われるだろうけどな。」

「して欲しくないもんっ。」



ほろ苦くて、甘くて、丁度いい。


なのに、まだチョコが食べ終わっていない私に源がキスするから。

甘さが増すじゃん。



「んぅっ…、ふ。」



2人の間にあったチョコがなくなったことを疑うほどに、甘さは増す一方で。



「は、じめ…。」

「甘いな…。」

「ばか…。」



源は小さく笑うと、自分の口にチョコを1つ放り込んで、そのまま私にキスをした。

間で溶けるチョコは甘さ控えめのはずなのに、むせ返るほど甘い。


しないって、言ったくせに。

そんな反論は、チョコと一緒に溶けていった。
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