あの加藤とあの課長
「え?」

「この香水、陽萌のじゃないよな。」



と私の胸元に顔を寄せる。



「あ…。」



課長の、だ。

資料室で助けてもらったときにでもついたんだろう。


まずい。



「これ、男物の香水の匂いだよな?」

「人混みの中でついたんじゃない?」



適当に返すも、直人は納得いかなそうにさらに眉間に皺を寄せる。

いい加減、疲れているから面倒臭くなる。



「別に、やましいことはないから。」



直人は独占欲が強いんだかなんだか知らないけれど、束縛がやたらと厳しい。

やきもちだって尋常じゃないくらい妬く。



「……生渕さんの?」



その言葉に思わず肩が跳ねる。直人はそれを見逃さなかった。

乱暴に私を引き離すと、シートベルトを締めて車を発車する。


……嫌な予感がする。それに伴ってか目眩がいよいよひどくなる。



私の家に着いて、帰るものだと思ったら直人は家に上がり込んできた。
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