あの加藤とあの課長
諦めて目を閉じた私の耳に、ドタバタと足音が聞こえてきた。


次の瞬間には近付いてきた足音の主に、思い切り体を引き寄せられていた。

荒い息遣いがすぐ側で聞こえる。



「陽萌…!」

「恵…也…。」



驚きで言葉がつっかえてしまった。


(どうして、ここに…?)

そんな私の心を読んだかのように、恵也は優しく微笑んで言った。



「言ったやろ、俺はお前を守るて決めたんや。」

「恵也…。」



恵也ふ私を抱き止めていた腕を離すと、上段にいる彼女を見上げ、睨み付けた。



「殺す気やったんか?」

「殺すなんて…そんな!」



彼女の悲痛な叫びが階段に響いた。



「アタシは、ただ…!」

「打ち所が悪かったら死んどったかもしれんのやぞ!?」

「っ…!」

「上と相談して、お前にはそれなりの処罰を与える。それでええな。」



これまで彼女がしてきたことを考慮すれば、そのくらい当然なのかもしれない。

だけど…。



「待って、恵也!」

「なんや。」
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