あの加藤とあの課長
「ん終わったあー!」



パソコンから目を離して伸びをすると、思わず叫んでしまった。

笑いながら「お疲れ」と声をかけてくれる恵也。


周りを見回すと、オフィスには私たちしか残っていなかった。



「ほな、帰ろか。」



同じく伸びをしてから、恵也は鞄を掴んで言った。



「うん。」



あの一件以来変わったのは、彼女と私の関係性だけじゃない。

私と恵也もまた、そうだった。



「にしても、噂は本当やったんやなぁ…。」



駅に向かって2人で並んで歩いていると、恵也が突然そんなことを言い出した。

隣の恵也を仰ぎ見ると、恵也は悪戯っ子のように笑っていた。



「噂?」

「陽萌が仕事の鬼やって。主に東京本社から来た奴等やけど、有名やで。」

「あー…。」



確かに、本社にいた頃も言われていたな…。

ただ、源の方がインパクトが強かったと言うか…。だから、私はそこまで噂されなかった。



「ま、怠け者よりはええやろ。」

「そりゃー…、ねぇ。」



改札を抜け、ホームに滑り込んできた電車に乗り込む。

端から見たら、私たちはどう見えるのだろう。
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