あの加藤とあの課長
社宅に着いて家の方へと廊下を歩いていると、私の家のドアにもたれかかる人影があった。



「…陽萌。」

「う、うん…。」



何…? またストーカーかなんか…?

そう思ったものの、よく見れば、その人影は女のものだった。



「…女の人だよ? 恵也、なんかやったんじゃないの…?」

「は!?」

「家間違えて私の家の前にいるとか。」

「アホか! お前らと一緒にすなや。」

「なっ…!」



失礼な!

2人で言い争っていると、その人影は私たちに気付いたらしく、こちらに歩いてくる。


咄嗟に恵也の後ろに隠れた私に、恵也は苦笑した。



「陽萌ーっ!」



私たちに近付いてきた人影は、私の名前を呼びながら両腕を広げた。

名前を呼ばれたことに驚いてその人の顔を見て、さらに驚いた。



「と、敏ちゃん!」

「久しぶり~♪」

「敏ちゃぁああん!」



恵也の後ろから飛び出して敏ちゃんに抱きつくと、敏ちゃんも私を抱き締め返す。



「そんな格好してるから分かんなかったよ! またストーカーかと思っちゃった!」

「んまぁ失礼しちゃう!」

「ていうか突然すぎだよーっ。」
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