あの加藤とあの課長
女の格好をした敏ちゃんを見るのは、社員旅行以来だからこれで2回目。

道理で分からないわけだ。



「あらいい男じゃなーい! 源が言ってた三富 恵也?」

「敏ちゃんたらいきなり呼び捨て…。」



苦笑する私をよそに、敏ちゃんは恵也に詰め寄ると、ニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべた。

そんな敏ちゃんに、恵也もタジタジ。



「ど、どうも…。」

「いい男ねー! しかも関西弁! アタシハマりそう。」



私を振り返りながらそう言うもんだから、恵也と2人して苦笑した。



「敏ちゃん…? も美人さんやないですか。陽萌にこないな美人な友達ができるなんて、思てませんでしたわ。」

「あ、恵也。敏ちゃん、男だよ!」

「え、男…?」

「ちょっ、なんで言うのよー!」

「だってっ、恵也に騙されて欲しくないし…。」



そう言った瞬間、敏ちゃんが鬼の形相で迫ってきた。



「アンタねぇぇえ…。」

「ごごごご、ごめんなさいぃー!」



羽交い締めにされて半泣きになりながら謝ると、敏ちゃんはやっと許してくれた。

恵也はポカーンとしちゃってるし。
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