あの加藤とあの課長
「初めまして、アタシ、玉川 敏子。」



私を解放した敏ちゃんは、その顔に笑顔を張り付けて言った。

本当、敏ちゃんも綺麗なお顔をなさっている。



「あ、敏雄だよ。」

「陽萌は黙ってる!」

「はーい…。」



怖いよ敏ちゃん…! まさか本当に…そんなに…愛に飢えているの!?

だとしたら…恵也が狙われる…?



「三富 恵也です…。どうも…。」



とりあえずといった感じで答えた恵也を眺めながら、どうしようもなく嫌になった。


敏ちゃんと恵也なんて嫌だ…。

ううん、それどころか、恵也と誰かなんて…、何か嫌だ…。



「…陽萌?」



恵也に呼ばれて我に返ると、心配そうな顔をした恵也と、不思議そうな顔をした敏ちゃんがいた。



「え、あ、何?」

「お前も疲れとるやろ、さっさと家入って休み。」

「あぁ…、うん…。」



恵也に促されて鞄から家の鍵を取り出しながら、ふと気が付いた。



「敏ちゃん、どうするの?」



見れば、なかなかの大荷物の敏ちゃん。

私の問いにキョトンとした敏ちゃんは、「何言ってんのよー」と言った。



「陽萌ん家に泊まるに決まってんでしょー。」

「あ、そうなの? オッケー。」



そんな私たちの会話を聞いて、恵也はびっくりしていたけど。

廊下で散々騒いでしまったこともあり、さっさと部屋に引き上げた。
< 298 / 474 >

この作品をシェア

pagetop