あの加藤とあの課長
「相っ変わらず陽萌の部屋ってなーんもないのねぇ…。」



部屋の中をぐるりと見回して、敏ちゃんは溜め息を吐きながら言った。

確かに何もないけど…。



「あ、陽萌、パジャマ貸して。」

「持ってこなかったの?」



敏ちゃんの大きな荷物をチラリと見てから訊いた。



「私服とか化粧品とか、その辺詰め込んだら入らなかったのよ。」

「そ、そう…。」



敏ちゃんって本当、私より乙女なんじゃないかと思うよ…。



「あ、ねえ! お土産とかないのっ?」

「お土産ー?」

「だって、泊めてもらうお礼に…とか。あっても良さそうでしょ?」

「あー…。」



敏ちゃんは「確かに」と呟きながら明後日を向いた。



「え、なし!?」

「あるわけないじゃない。それとも、源のパンツでも持ってくればよかった?」

「い、いらないっ。」

「冗談よ。」



敏ちゃんの冗談って、冗談に聞こえないから質が悪い。
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