あの加藤とあの課長
嫌な予感ほど当たるもので。

玄関に入った瞬間壁に押し付けれた体はもうろくに言うことも聞かなくて。



「止めて…!」



そう言う声もどこか弱々しく覇気がない。

抵抗も虚しく塞がれた唇に、私は諦めた。
せっかく課長が早く上がらせてくれたのに。




『俺、陽萌のことが好きなんだ。…付き合って。』



ストレートに言われた告白の言葉を、1年も前のことなのにありありと思い出せる。

優しくて、兄貴体質で、甘えさせてくれる。


時折見せる同年代にしては幼い表情が可愛いなんて思ったりした。




『一緒に住まないか?』



そう言われたのはつい先日。
返事はまだ、してない。

仕事に打ち込みたい私は、同居人に気を回せるほどの余裕が今のところない。



上手く、やってこれてたと思ってたんだけどなぁ。どこで間違えたんだろう。


元より結婚なんて考えもしない遊びの付き合いだったけれど。

好きでもない相手と付き合うことに慣れている私は、結婚もそんなノリなのかななんて漠然と考えるようになっていた。




「も、無理っ…!」



必死に声を上げるも、直人には関係ないらしい。



「陽萌…!」

「ぃ、やぁ…っ。」



狂ったように、私を抱き続けた。
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