あの加藤とあの課長
「恵也が上京して、環境が変わった。連絡が途絶えて、自然消滅。」
「…うん。」
「それがなかったらって、考えなかった訳じゃない。」
高校の頃、何度も考えた。
だけどそれは起こってしまった後では、何の意味も成さないただの愚問。
「だけどこっちに来てわりとすぐ、恵也に言われたの。」
―――『あの頃、別れてへんかったら…。…俺ら、今頃どうなってたんやろな。』
―――『…でも、陽萌を諦めたことはなかった。あの頃から想いは変わっとらん。これっぽっちもや。』
「あの頃別れてなかったらどうなってたんだろう…って、また考えた。そしたら、あの頃が懐かしくて、恋しくて…!」
あの頃に戻りたいと思った私がいた。
「私…どうしたいんだろう。」
源が好きなのに。側にいたいのに、帰りたいのに。
後ろ髪を引かれるどころか、もはや後ろ腕を引かれてしまう。
嫌いで別れた訳じゃなかったから。
「好きじゃなくなっての別れだったら、よかったのに。」
時間が戻ることはないけれど、心が戻っていく。抗うことなんてできない。
私はただ、そんな自分を、恐れるだけ。
「…うん。」
「それがなかったらって、考えなかった訳じゃない。」
高校の頃、何度も考えた。
だけどそれは起こってしまった後では、何の意味も成さないただの愚問。
「だけどこっちに来てわりとすぐ、恵也に言われたの。」
―――『あの頃、別れてへんかったら…。…俺ら、今頃どうなってたんやろな。』
―――『…でも、陽萌を諦めたことはなかった。あの頃から想いは変わっとらん。これっぽっちもや。』
「あの頃別れてなかったらどうなってたんだろう…って、また考えた。そしたら、あの頃が懐かしくて、恋しくて…!」
あの頃に戻りたいと思った私がいた。
「私…どうしたいんだろう。」
源が好きなのに。側にいたいのに、帰りたいのに。
後ろ髪を引かれるどころか、もはや後ろ腕を引かれてしまう。
嫌いで別れた訳じゃなかったから。
「好きじゃなくなっての別れだったら、よかったのに。」
時間が戻ることはないけれど、心が戻っていく。抗うことなんてできない。
私はただ、そんな自分を、恐れるだけ。