あの加藤とあの課長
本社へ赴くと、その懐かしさに鼻の奥がツンとした。

中に入ると、関西支社との人の多さの違いに思わず目を細めそうになるのを何とか堪えた。



「加藤さん！？」



どこからともなくそんな声が飛んできて。


わらわらと歓声にも似た声があちこちから上がる。



「なんや、アイドルみたいやなぁ。」



と隣の部長が面白そうに笑う。



「すみません、騒々しくて…。」

「えぇよ。むしろ加藤くんの人間性が表れとるようでなんや嬉しいなぁ。」

「ありがとうございます。」



それから会議室に向かうために、エレベーターに乗り込んだ。


（懐かしいなぁ…。）

２ヶ月前と、何も変わらない。


３階でエレベーターが止まった。会議室があるのは７階。

３階は、営業部がある階。


乗り込んで来たその人と目が合って、その人の目元が緩んだのを見た。



「おー、生渕くんやないかぁ！」



先に声をかけたのは、関西支社の部長。



「お久しぶりです。」



そう返したのは、相変わらずの無表情な声。


この間連絡したとき、今日から３日間、家に帰ることは伝えてある。

家に帰るのが楽しみな一方で、恵也に揺れる自分がいることが浮き彫りになるようで怖かった。
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