あの加藤とあの課長
その目は何かを決心したかのように、揺るぎない。



「俺は、陽萌に後悔して欲しくないんだ。」

「源…。」

「特に、相手が好きなことなら尚更だ。逃げないで欲しい。後悔しないで欲しい。」



ほら、こうやって、選択肢を絞る。

選択肢があるように見せておきながら、実際にはないんだ。



「私…、頑張る…。」



そう俯いて言った私の頭を撫でながら、「あぁ。」と言った。




「狡いよ…、源は、いっつも…。」



あんな言い方されたら、頑張るとしか言えなくなっちゃうのに。


顔を上げて源を見つめる。


源は怖くないの?

終わりの見えない日々が。変わっていく私が。私が恵也の側にいることが。

口で言えないことを、視線で訴える。



「……風呂、入ってこい。」



先に目を反らしたのは、源だった。


私の頭を一撫ですると、そのまま冷蔵庫の方へ行ってしまった。

私は仕方なく、お風呂に向かった。



「ふぁー…。」



やっぱり、住み慣れた家のお風呂はいいなー…。

湯船に浸かりながら、のんびりとそんなことを考えていた。
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