あの加藤とあの課長
お風呂を上がると、ケータイが光っていた。

知らせるのは着信。


タオルで頭を拭きながら相手を確認すると、表示された名前は【恵也】。

源を見ると、ビールを呑みながらテレビを見ていた。


なんだろう、何かあったのかな…。

心配になって電話を折り返すと、もののワンコールで出た。



「もしもし? 何かあった?」



寝室のドアを閉めながらそう問うと、耳に聞こえたのは溜め息混じりな声。



『陽萌…?』

「え、どうしたの?」

『いや、何も…。』



そう言いながらゴホゴホと咳き込む。



「ちょっと、風邪引いたの?」

『んぁ~、なんかそうみたいやわ…。』



弱りきったような声を出す恵也。

気付けば、すがるようにケータイを両手で握り締めていた。



「大丈夫? 熱計った?」

『おー…。』

「薬は?」

『飲んだ飲んだー。』



そう言う恵也にホッと溜め息を吐いた。



『熱があるときって、人恋しくなるやん。』



そう言って、ケラケラ笑った。

確かに、熱を出したときとかって人恋しくなるよね…。


「ちゃんと食べて、たくさん寝るんだよ?」と念を押して電話を切った。
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