あの加藤とあの課長
後悔後悔って、皆して、そればっか。


心の中で軽く悪態を吐きながらも、後悔しないよう、私はある場所へと向かっていた。

昼休みだから、今いるかは定かじゃない。しかもさっき営業部に寄って挨拶して来たから少し遅い。



「敏ちゃーん。」



ノックすらせずにドアを開けると、中にいた彼はギョッとして見せた。



「ちょっと、ノックくらいしなさいよ!」

「ご、ごめん…。」

「ノックしないのなんてアンタと源くらいよー。」



そう言いながら私に座るよう、椅子を勧めてくれる。

椅子に腰かけながら敏ちゃんをマジマジと見る。


何の変化もなし。



「何よ、見つめちゃって。アタシに惚れた?」

「なっ…!」

「冗談よ、逆に傷付くわ…。」



そう言って苦笑する。



「…あのね、敏ちゃん。」

「ん?」



敏ちゃんが家に泊りに来た、あの時。

敏ちゃんに言われた言葉が耳から離れなくて。



「私、敏ちゃんに言われた通り甘ちゃんで、側に誰かがいないと駄目なのかなって、すごく考えたの。」



あの時。
完全に軽蔑されたと思った。

だけど、私はそれを弁明することすらできない。



「正直、実際のところはどうなのか全然分かんないの。」

「ふーん?」

「でもね、今回帰って来て、私の居場所はここにあるんだって思ったの。」
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