あの加藤とあの課長
源がいて、皆がいて。

愛され、求められ、必要とされ。
愛し、求め、必要としている。


そんなモノが溢れているここが、私の居場所。



「だから私、頑張る。ううん、頑張れる…と、思うんだ。」



物理的な距離にだって、勝てると思うの。


私がそう言うと、敏ちゃんは少し考える素振りをみせた後、ハッとしたようになった。

そして苦笑した。



「アンタ、もしかしてこの間アタシが言ったこと、結構気にしてた…?」

「うん…。軽蔑されたんじゃないかって、嫌われたんじゃないかって…。」



俯いてそう言うと、そんな私を包み込むように抱き締めてくれた敏ちゃん。

それはもう、痛いくらいにギュッと力を込めて。



「馬鹿ねぇ、嫌うわけないじゃない。」

「敏ちゃん…。」

「十人十色、皆違うんだから。」



この声音は驚く程優しくて。



「甘ちゃんだって、メンタル弱くたって、陽萌が陽萌である限り、アタシは陽萌が好きよ。それは変わらない。」

「敏ちゃんーっ。」



ギューッと抱き付くと、敏ちゃんは明るく笑って言った。



「ほら、もう会議始まるんじゃないの? さっさと行きなさい。」

「うん!」



そう言って椅子から立ち上がった私を見る敏ちゃんの目は、優しさに満ち溢れていた。
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