あの加藤とあの課長
会議室へ行くと、部長はすでに席に着いていた。

その隣に腰を下ろすと、それに気付いた部長が微笑みかけてくれた。


顔を上げると、前の方に源が座っているのが見えた。


その隣には、女の人。

これまた私が出向以降の人事で営業部に配属されたんだろう、源よりも年上に見えるその人。


(朝の人と、違う人…。)



「これから会議を始めます。」



そんな声が掛って、全員が各々に動き始めた。



「まず来期の売上目標ですがー…」



資料を見ながら話を始めた。

資料に目を移す者、パワーポイントに目を向ける者、様々だ。


ふと資料を見ていた視線を上げると、源が視界に入った。


(……何、あれ。)


源と一緒に資料を覗き込むその女の人と源の密着度は、かなり高め。


もはや何を言っているのかすら、耳に入りそうもない。

私、嫉妬してる。


源の隣は私の場所だったのに。


私…居場所をいつの間にか、失っていたんだ。さっき敏ちゃんに言ったくせにね。



「加藤くん、顔色悪いで…? 大丈夫か…?」



部長が声を掛けてくれるけれど、弱々しく微笑みながら頷くしかできなかった。
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