あの加藤とあの課長
源。

源。


返事のない呼びかけは、暗闇の中木霊する。

やがて誰の耳に届くこともなく消える。


源。
心はこんなにも、求めてる。

馬鹿な、私…。



目を覚ますと、恵也の顔が飛び込んできた。



「ひゃっ…。」



驚いて声を漏らすと、恵也はホッとしたように笑った。

ここ…、救護室…?



「心配したで、急に気ぃ失うんやもん。」

「私…。」

「倒れたんやで。」



やっちゃった…。

仰向けに寝転がって、ベッドに体を沈め項垂れる。



「…見たで、社内報。」

「…そっか。」

「お前のデスクのとこ落ちとったから、拾った時に目に入って…。」

「うん…。」



恵也には、源を別れたこと、言ってなかったな。

晋ちゃんや煌、敏ちゃん、増田ちゃんには一応言ったんだけど…。


隙を見せるじゃないけど、恵也には何となく…、言っちゃいけない気がしたから。



「貧血と、あと熱やって。微熱やけど。」

「そ、か…。」



寝不足と栄養失調だろうなぁ…。

こうやって自己分析できる辺り、頭は冷静なんだと思って少しホッとする。
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