あの加藤とあの課長
「どや?」

「ん…、寒気する。」



まだ熱上がるな、こりゃ…。


溜め息を吐く私の頭を、遠慮がちに撫でる恵也の手。

それがまた心地良い。



「一緒に帰ろ。」

「ん…。」

「もう定時過ぎやし、荷物取って来たる。」

「お願い…。」



こうやって普通に甘えられる存在が側にあってよかったと心から思う。

特に、弱っているときは。



「任しとき。」



そう笑って、恵也は救護室を出て行った。


あぁ…、私はまた、甘えてしまうんだ。側にある存在に、身を委ねてしまう。

思えば恵也と別れて以来、ずっとそうだったように思う。


自分の情けなさに涙が溢れそうになる。



「陽萌、帰ろ。」



涙が溢れそうになった瞬間、ひょっこり顔を出した恵也。

なんてタイミングの良さ。



「…うん。」



ノソノソと起き上ると、私の肩に私のコートを掛けてくれる。


どうせ変われやしないんだ。
恵也と別れてからずっとそうだったんだもん。

かれこれ10年近く。


私は側にある存在に、身を委ね続けてきたんだから。


それならもう、いいや、このままでも…。
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