あの加藤とあの課長
恵也に無理やり乗せられたタクシーの中、私はどうやら寝てしまったようで。

目を覚ました時には、見慣れない部屋にいた。



「ここ…。」



ゆっくりと起き上ると、どうやら男の部屋。

部屋の雰囲気や見慣れた家具を見つけたことから、この部屋が恵也のものであると確信した。


恵也は、いないらしい。


自分の体に視線をずらせば、恵也のものと思われるスウェットを着ていて。



「恵也が……?」



高校の時に散々見られているとは言え、10年もあれば体のラインも変わっているはず。

(急に恥ずかしい…。)


裸を見られるの自体はさほど抵抗がなかったりする。

けど、相手が恵也となれば話は別だったり。



「陽萌? 起きたんか?」

「恵也…。」



リビングに入ってきた恵也は、お風呂上がりらしく。

髪の毛が濡れていた。



「なんかいろいろ勝手にしてしもた、スマンな。」



そう言いながら、床に敷かれたベッドの淵に腰掛ける。



「ううん、私こそ、迷惑かけて…。」

「ええって。今日はもうこのまま泊っていき。」

「でも…。」
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