あの加藤とあの課長

過去との決別へ

身支度を終えて、戸締まりを確認する。



「あ…。」



戸締まりを確認した際、外の景色が目に入って、思わず声が漏れた。


綺麗な桜が咲いていた。

ハラハラと舞い散る桜が綺麗で、1年前を思い出させる。


1年前、課長補佐になったあの日。

外回りに行った、源が運転する社用車の助手席。舞い散る桜を見たっけ。


あのときは源は増田ちゃんと付き合ってて。
私は直人と付き合ってて。



「……1年、濃かったなぁ…。」



いろいろあった。
変われたような気がした。

源だけが好きで、真っ直ぐな想いでいれる気がした。



「…変わらない、よね。」



目の前の景色を避え切るように、カーテンを閉めた。

桜の綺麗さも変わらなければ、私も結局、変わってなかった。


あぁ、世の中はそんな簡単に変わらないんだ。


玄関を出ると、廊下の柵に寄り掛かる恵也がいた。



「おはよ。」



私に気付くと、ふっと笑って言った。

あれからもう1週間。
恵也は毎朝こうして、私を待っていてくれる。



「…おはよう。」



平和に、穏やかに、和やかに。
こうやって毎日が過ぎていくんだろう。
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