あの加藤とあの課長
それから彼女に別れを告げて、迎えに来てくれた恵也の車で帰って来た。



「ほな、ちゃんと戸締まりするんやで。」

「…ん。ありがと…。」



私が部屋のドアを開けたのを見届けると、恵也も自分の部屋の方へと足を進めた。


恵也は、私に触れてこようとはしない。精々抱き締める程度。

それを何とも思ってはいない。


きっと恵也に歯止めをかけるのは、さっき言っていたこと。

私が恵也に気持ちがないことに気が付いているから。



「…はぁ。」



化粧だけ落としてスウェットに着替え、ベッドに倒れ込む。



「お腹すいた…。」



源と別れてからというもの、私の生活は悪化の一途を辿るばかり。


朝も夜も食事は摂らず、摂るのは昼食のみ。

夜も、眠れなくなってしまった。



「ん~…。」



ゴロンと寝返りを打って、天井を見つめる。



「…好き。」



そんなの、もう、どうだっていいよ。

そう思う傍ら、源を恋しく思う私が間違いなくいて。頬を伝う涙は、私の想いを代弁するかのように熱かった。
< 343 / 474 >

この作品をシェア

pagetop