あの加藤とあの課長
そういえば、変わったことがもう2つ。

それはどういう意味かと言えば、確実に良いものではなく。むしろ完全に、悪いもの。



「んっ…。」



彼女と呑みに行ってから数日後の今日。

会議に向かう高山課長の隣、連絡を伝えていた私は、思わず抱えていたクリップボードを抱き締めた。



「加藤さん?」

「な、何でもありません…。」



気を取り直して連絡を再開すると、高山課長もそれに耳を傾け始めた。



「ふぅ…。」



デスクに戻り椅子に腰掛けながら、思わず溜め息を吐いた。


最近、背中が疼く。
正確には背中のあの傷跡が疼くんだ。

まるでその存在を、主張するかのように。



「加藤さん。ゴールデンウィークとかご予定は?」



会議を終えた高山課長が、戻ってくるなりそう尋ねてくる。

店舗や営業で培われた笑顔を張り付ける。



「ええ。本社の後輩が来る予定になってますが。」

「そ、そうですか…。」



最近になって、高山課長からこうした遠回しなお誘いをよく受ける。

どうしたというのか、こんな急に。


第一、私には彼氏がいるというのに。



「後輩…って、どなたですか?」

「営業で一緒だった、増田です。」
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