あの加藤とあの課長
「増田ちゃん何食べたいー?」

「取り合えず呑みたいです。」

「何時からそんな…。」



まあお酒の力を借りないと話しにくいことって、あるよね。

カゴにお酒を放り込みながら、おつまみも放り込んでいく。


カゴが十分重くなったところで会計をして、家路につく。



「あ、陽萌や。」



マンションのエントランスに差し掛かった丁度その時、私を呼ぶ声がした。

ふと顔を上げると、指に車のキーを引っ掛けた恵也がいた。



「あれ、旅行じゃなかったの?」



確か、高校の時の友達とぶらり旅とか…。



「弾丸ツアーとか思たんやけど、ガンタのやつが風邪拗らせて。」

「そうなんだぁ…。」



ガンタくんは、恵也の高校の時の悪友みたいなもので。本名は元太(げんた)という。

恵也と再会してすぐその名前を耳にして、その存在を思い出した。



「…あれ、その子…。」



恵也に指摘されて増田ちゃんを振り返ると、それまで呆けていた増田ちゃんは我に返ったようだ。



「あ、増田です。」

「本社の時の後輩。」

「へぇ…! あの陽萌に女の子の友達ができるなんて…。なんか感動したわ。」



そう言って、爽やかに笑った。
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