あの加藤とあの課長
「…ここじゃアレだし…、中入ろ?」



玄関で突っ立っていたものだから、増田ちゃんを奥へと促した。

キッチンを通りすぎ様、増田ちゃんがキッチンを見る。



「座ってて、おつまみとか作っちゃうから。」



そう促して、買ったものを冷蔵庫に詰める。

詰めなかった物はシンクの上に並べたり、テーブルの上に並べたり。


せかせか動く私を横目に、増田ちゃんは視線を右往左往させていた。



「ほいっ。」



できたおつまみをテーブルに並べて、やっと腰を落ち着ける。



「…加藤さん。」

「はぁい?」



おつまみを口の中に放り込み、チューハイを煽りながらそう答えると、増田ちゃんは思いの外真剣な顔をしていて。

私はふざけるのを止めた。



「大丈夫ですか?」

「へ?」



質問内容が予想外のもので、私は思わず間抜けな声を出してしまった。

大丈夫…?



「だってキッチンとか使った形跡あんまりないし、見えた冷蔵庫はほぼ空だし。」

「…目敏いな。」

「灰皿は煙草だらけだし。」

「……。」

「いつの間にかお酒少し強くなってるし!」



早速1本空けた私を軽く睨む。

私は「えへ」と笑って見せるけど、それは彼女にとっては逆効果で。
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