あの加藤とあの課長
「すみませんでしたっ…!」

「…うん。」



それがきっと社内報の一件に関するものだと思って、それだけを返しておいた。

どうやらその私の予想は当たっていたようで。



「2人が別れたって知って、悲しくて悔しくてっ…。」

「うん。」

「どうにかならないかなんて思ったりして。」



増田ちゃんなりに、考えての行動だったんだと思う。

思うけど…。



「でも、仕事にそういう感情は持ち込んじゃ駄目だよね。」

「はい…。」

「それとこれとは別。切り離して考えなきゃね。」



そう言うと、増田ちゃんはコクンと頷いた後、やっぱり悲しそうに涙を流し続けた。



「今泉さんにも怒られました。」

「あはは、だろうねぇ…。」



私に電話してきたときの晋ちゃんの雰囲気から、それは察していた。

晋ちゃんもわりと仕事人間なところがあるから。



「…でも、課長は、何も言って来ませんでした。」



その言葉を聞いて、なぜだか胃がズシリと重くなる。



「…あの記事、掲載しなきゃよかったって、すごく後悔しました。」



ズルズルと鼻を啜りながら、いつの間にか手にしたビールのプルタブを開ける増田ちゃん。
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