あの加藤とあの課長
「あの記事のおかげで課長がフリーだって知れ渡っちゃったわけじゃないですか。」

「うん。」

「そしたら、また以前のように逆戻りで。」



それはまた、去る者追わず、来る者拒まず状態になっているということ…?


そんな光景を頭の中で想像してしまった。

すぐに我に返ったものの時すでに遅し。顔にもろに出てしまっていたらしい。



「彼女は作らなくて、もちろん体の関係なんかも皆無なのは見てて分かるんですけど。」



その言葉にホッとする自分が嫌になる。

手を離したのは、私なのに。



「…ハーレム状態と言いますか…。」

「あぁ…。」



言い寄る女の人が後を絶たないんだろう。


確かに、私と付き合う前の源は、別れた瞬間次は私だとでも言わんばかりにいろんな女の人に言い寄られてたっけ。

それも早い者勝ちだったから、なかなか壮絶で。



「…加藤さん。」



名前を呼ばれていつの間にか俯いていた顔を上げると、真剣な増田ちゃんの表情。

その目は何かを探ろうとしている。



「…本当に、いいんですか…? このままで…。」



このまま…。

源と別れて、別々の道を歩んで行く。
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