あの加藤とあの課長

あなたに愛された証

増田ちゃんの言っていた呼び出しがかかることもなく、季節は夏を迎えた。



「全員揃ったし、行くかぁ!」



嬉々として叫んだ部長は、それはもう気合い十分で。

後に続く私たちはといえば、嬉々としている者とげんなりしている者に分かれていた。


私はと言えば、限りなく後者だ。



「陽萌、水着持ったか?」

「恵也、それセクハラ。」



なんて会話を交わしながらバスに乗り込む。


今日はこれから社員旅行に向かう。


毎年恒例、7月下旬。

今年は去年とは打って変わって、海水浴がお目当てらしい。



「本社の奴らも来るんやろ?」

「うん。」



懐かしい顔ぶれの中にいるであろう、源の顔を思い浮かべてはそれを消していた。


増田ちゃんの話の通りなら、きっとハーレム状態だろうな。

そんな源を見たくないと思う反面、私には関係ないと意地を張る。



「なんや楽しみやなー。」



と言うけれど、表情はそうでもない恵也。



「…本気でそう思ってる?」



そう問えば、恵也は悪戯っ子のように笑った。



「陽萌の水着姿がな。」

「もう。」



その肩を叩けば、楽しそうな笑いが返ってきた。
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