あの加藤とあの課長
「…恵也。」

「……後悔せんよう、行ってき。」



皆に後悔しないようにしろと散々言われたあの時は、それを鬱陶しくすら感じた。


だけど、今。

行かなかったら、絶対に後悔する…!



「…別れよう、陽萌。」



その言葉が耳に自棄にクリアに響いて。

その言葉の意味を理解するのには、少し時間がかかった。



「…俺、陽萌が好きや。甘えん坊なとこ、泣き虫なとこ、一生懸命なとこ…、あの頃から変わっとらん。」



確かに私は情けないくらいあの頃から全然変わってなくて。



「最初、高山課長に陽萌の本社での話聞いたとき、変わってもうたんやと思った。可笑しくなってもうたんかとかな。」



きっと、節操なしだった頃の話。

でも私は、その頃から変わってなくて。



「せやけど、違った。陽萌は、変わってへんかった。」



ふと顔を上げると、恵也は穏やかな顔をしていた。

私の手を握る手に、力が込められる。



「あの頃から、高校生の頃から変わっとらんかった。一途な陽萌のままやった。」

「…え?」



変わってたんだか変わってなかったんだか、訳が分からなくなってきて混乱し出した私の頭。

本当相変わらず、仕事以外では駄目な私だ。
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