あの加藤とあの課長
「陽萌は、俺と別れて以来、節操なしやったんやろ?」



コクリと頷く。

私がされるがまま、流されるままになったのは、恵也と別れて以来だった。



「その事を、陽萌は自分変わってもうたとか思ったんやろ?」

「……好きでもない人といて、普通に肌を重ねて。変わったなあ私って思った。」



そう、あの頃は、どうでもいいと思ったんだ。

恵也と別れて、捨てられたような気分になって、どうにでもなれって。



「せやけどな、俺は、陽萌が変わったんやなくて、可笑しなってただけやと思うねん。」

「…そう?」

「っちゅーか、好きになれる人に出会えへんかったっちゅーか。」



確かに、好きになった人って言われて思い出すのは、恵也と源のことだけ。

湊や直人は、少し違うような気がする。



「それは10年近く続いたんやと思う。けど、本社で生渕さんに出会うて、惚れたんやろ。」



源を好きになった。

最初は源の押しの方が強くて。でもいつしか、私も源を求めるようになって。



「それで、陽萌は正常に戻ったんやと思う。ちゃんと好きな人に出会って。」

「正常に…?」

「そ。せやから陽萌は、あの頃から根本的なところは変わってへんと思う。」
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