あの加藤とあの課長
残された病室内は静かだった。



「…源…。」



側にあった丸椅子を引き寄せてそこに腰掛け、源の手を握り締める。

温かい。


その温もりが、源が生きているんだと、無事なんだと実感させてくれる。

頬を涙が伝う。



「痩せたね…。」



眠る源に、そう声をかけた。


痩せたね。っていうか、やつれたよね。
顔色もすごく悪いし。

本当に食わず寝ずだったんだ。



「馬鹿…。何が、駆けつけてやれないから食え、寝ろ、よ。」



先に倒れたのは源の方じゃん。



「源こそ、自分を大事にしてよっ…。」



頬を伝った涙が、握り締めた源の手に落ちる。



「っ…、ありがと、源…。」



源はきっと、私が不安になること、気付いていたんだね。

だから私の居場所を、守ってくれてたんだ。



「不器用なんだから…。」



握り締めた源の手に額をつけて、涙を溢しながら笑った。



「源…。」



早く、目を覚まして。
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