あの加藤とあの課長
「…そうだね。」

「お前は出向の身だから、帰ってくるだろ。そしたら、お前を取り戻そうと思ってた。」

「源…。」



源は最初から…、私を手放す気なんて、なかったんだ…。

呆然とする一方で、その事実が嬉しい。



「何年越しの想いだと思ってんだよ。そう簡単に手放すかよ。」



そう言って、私の鼻を摘まんだ。

その言葉に、いつしか止まっていた涙が再び溢れ出す。



「…でもっ、私が戻らなかった可能性も、あったわけでしょ?」



そう問うと、源は一瞬キョトンとした後、不敵に笑って言った。



「そんなの知るか。」

「知るかって…。」

「そんなの、側にいればどうにでもなると思ったからな。」



コツンと私の額に自分のそれをつけて、目を閉じて微笑んだ。

そんな源につられるように、私も目を閉じた。



「陽萌の帰ってくるところは、俺の側にあるんだからな。」



源の隣に、少なくとも課長補佐として。

でも、その場所はきっと、源がこうしてくれなきゃ守られなかった場所。



「源…。」



上手く言葉が出てこなくて、ただ源の名前を呼んだ。

私、こんなにも愛されてたんだ。
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