あの加藤とあの課長
「なぁ、加藤くん。」

「…はい。」

「気ぃ付けや。なんや、嫌な予感がするんや。」

「…嫌な、予感?」



眉をひそめる私に、コクリと頷く部長。



「何や、本来の目的とは、ちゃう何か別の思惑が働いとるような気がするんや。」



その意味深な言葉に、私は記憶の糸を手繰り寄せた。


元はと言えば、この出向自体不思議なものだった。

本社の部長曰く、きっと本来なら源か部長が務めるはずだったもの。


それが私に回ってきたのは、元専務と常務の恨みを買ったこと。そして、人事部長の息子である、高山課長が私に惚れていること。


この2つが原因だと考えていた。



「…何もないと、ええんやけど…。」



これ以外にも、もしかしたらあたりする…のかな。

本社に戻ったら、敏ちゃんと調べてみよう。



「これ以上、2人に何かあっても嫌やしなぁ。」

「…2人?」



部長の言葉が引っ掛かって首を傾げると、部長は再びニヤニヤ笑いを復活させた。



「生渕くんがこっち来た時に気ぃ付いたで、2人のこと。」

「……。」



さすが、営業部の部長になるだけのことはある。この人の洞察力も侮れないな…。

あからさまに顔をしかめた私に、部長は言った。



「せやから決算のとき付き合わせたり。」

「え。」

「してみたんやけどなぁ。」



黙り込んだ私に、ニヤニヤ笑いかける部長。

…やられた。
そういう目的だったのか…。



「いろいろあったみたいやけど? まぁ一件落着やな。」



本当に、侮れない部長だ。
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