あの加藤とあの課長
「…もう、言っちゃおっか。」



なんて自己完結させた高山課長は、うんうんと頷いた後、私を真っ直ぐに見た。

突然向けられた眼差しに、思わずドキリとする。



「俺、本社にいた頃から加藤さんが好きなんだ。」



まさかこんな所で告げられるとは思いも寄らなかったから、私は驚いたまま言葉を発せずにいた。



「俺がこっちに異動になったとき、駄目元で親父に頼んだんだ。」

「…そうですか。」

「そしたら、本当に通っちゃってびっくり。」



ケラケラと笑う高山課長に呆れそうになる。

それはきっと、元専務と常務の裏工作があったからだ。


この人は、何も知らずに…。



「だけどね、俺は異動で君は出向。この意味、分かる?」



分かるような、分からないような。

コテンと首を傾げた私に、自嘲気味とも取れる笑みを零した高山課長は言った。



「君の出向期間中に君を惚れさせる。それが条件だったってわけ。」

「……ちょっと意味が…。」

「君には本来、本社から出向終了かそのまま異動かの選択肢が与えられるはずだった。」



増田ちゃんや部長が言っていた通りの発言に、私は頷いた。
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