あの加藤とあの課長
「それで、君に俺といるためにこのまま大阪に留まってもらう。そういう予定だった。」

「…は?」



思わず漏れた言葉にも嫌な顔1つせず微笑む高山課長。



「予定だったって言うか、そうしろって親父に言われてたんだ。」

「…そう、なんですか。」

「出向は、少なくとも1年。そう言われてたから、その間が勝負だった。」

「……でも、それが短くなった…。」

「そ。思いの外、生渕さんが頑張ったからね。想定外だったよ。」



そう言って伏し目がちにテーブルを見つめた。



「さらに想定外だったのが、三富くんだ。」



恵也の存在。

きっと人事部長も、高山課長も、誰も予想だにしなかったことだ。



「時期が早まるのは手に取るように分かったからね。どんな形でもいいから加藤さんを引き留めるよう言われた。」

「…はぁ。」



もしかして、ここ最近やたらと言い寄って来ていたのは、そのため…?


そんな考えを巡らせて、やっぱり苦笑い。

この人、ずれてると言うか、不器用と言うか…。



「まぁ、全部失敗に終わっちゃったわけだけど。」

「…ですね。」
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