あの加藤とあの課長
「加藤さん幸せそうだし、いいかなー…、なんて。」



そう言って優しく笑う彼は、第一印象の通り、とてもいい人そうだった。


一区切りついたと思われたその時、グッドタイミングで料理が運ばれてきた。


「いただきます」と手を合わせて食べ始めると、途端にその場に沈黙が流れる。

お互い、食べるときは静かになるタイプらしい。



「…ねぇ、加藤さん。」



不意に呼ばれて顔を上げると、生姜焼きを見つめたままの高山課長がいた。

そしてそのまま、言葉を紡いだ。



「…何か、さ。どう言っていいかよく分かんないんだけど…。」

「…はい。」

「……何か引っかかるんだ。」

「…はぁ。」



首を傾げた私の目の前。

高山課長は微動だにせず、そのまま生姜焼きを見つめていた。



「親父は普段、俺にああしろこうしろ言わないタイプなんだ。」



おもむろに顎に手を当てると、そのまま視線を横にずらす。

相当何かを考え込んでいるようだ。



「だけど今回は、やたら指示が多くて…。」

「はぁ…。」

「実は、君の交際状況を報告するよう言われてたんだ。」

「…え?」
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