あの加藤とあの課長
結局、直人が来ることはなく。

そのまま日曜日を迎えた。


待ち合わせは2人でよく行った、彼行きつけのカフェ。



「待った?」

「いや。それより、大丈夫か? 倒れたんだって?」

「もう大丈夫。」



倒れたのは、少なくとも何割かは直人のせいだけどね。

そう思いながら微笑みかけた。



「ねぇ。」

「ん?」

「別れて。」



そう言った私に、直人は凍りついたように固まった。歪められた顔全体が嫌だと言っている。

でも、私も限界だもん。



「…はっ、やっぱり生渕さんか。」



自嘲気味に笑った直人の口から出た言葉は、言われたくなかった言葉。



「え?」

「俺、あの人に宣戦布告されてたんだよな。」

「ちょっと待って、話が見えない。」

「は? 生渕さんに乗り換えんじゃねーの?」

「…そんなわけないでしょ。」

「ふーん。」



別れ話をされたからなのか、今日の直人にはどこか余裕がある。



「じゃ、この話はなし。」

「ぅえ?」
< 39 / 474 >

この作品をシェア

pagetop