あの加藤とあの課長
私の帰る場所
辞令が出てから約1ヶ月。
下半期に合わせて、異動することになった。
「よしっ、荷物は全部送り終えたな!」
腰に両手を当て、空っぽになった部屋を見つめる。
何度も味わったこの虚無感。
今は、どういうわけか悲しさを感じない。
「さてと…。」
鞄と1泊分の荷物が入ったキャリーに手をかけた。
私はこれから、東京に……源の元に、帰る。
玄関のドアを開けて外に出ると、廊下の柵に背中を預ける恵也がいた。
「…よっ。」
私に気が付くと、笑ってそう言った。
「…あの時とは、逆やな。」
柵から一歩前へと踏み出すと、俯きがちに笑って言った。
あの時…、上京する恵也を送り出したあの時。
「そうだね…。」
昔に思いを馳せる私に小さく笑ったあと、私の頭に手を置いた。
「もう、それもなしやったな。」
「…だったね。」
過去と決別して歩き出すと決めた私たち。
時間はかかるだろうけれど、きっと大丈夫だと、思うんだ。
「駅まで送るで。」
「ありがと。」
電車で行こうと思っていたけれど、正直車があると助かる。
「仲直りできてよかったな、生渕さんと。」
「ありがと。」
「もう、離れたらアカンで?」
「うん。」
下半期に合わせて、異動することになった。
「よしっ、荷物は全部送り終えたな!」
腰に両手を当て、空っぽになった部屋を見つめる。
何度も味わったこの虚無感。
今は、どういうわけか悲しさを感じない。
「さてと…。」
鞄と1泊分の荷物が入ったキャリーに手をかけた。
私はこれから、東京に……源の元に、帰る。
玄関のドアを開けて外に出ると、廊下の柵に背中を預ける恵也がいた。
「…よっ。」
私に気が付くと、笑ってそう言った。
「…あの時とは、逆やな。」
柵から一歩前へと踏み出すと、俯きがちに笑って言った。
あの時…、上京する恵也を送り出したあの時。
「そうだね…。」
昔に思いを馳せる私に小さく笑ったあと、私の頭に手を置いた。
「もう、それもなしやったな。」
「…だったね。」
過去と決別して歩き出すと決めた私たち。
時間はかかるだろうけれど、きっと大丈夫だと、思うんだ。
「駅まで送るで。」
「ありがと。」
電車で行こうと思っていたけれど、正直車があると助かる。
「仲直りできてよかったな、生渕さんと。」
「ありがと。」
「もう、離れたらアカンで?」
「うん。」