あの加藤とあの課長
源の胸に額をつけてコクリと頷く。



「ちゃんと、待ってる。」



前科があるけれど、今度こそ、待っていよう。

汚名返上だ!


1人意気込む私に微笑んで、頬にそっと唇を寄せる。そしてそのまま触れるだけのキスを、私の唇に落とす。



「来月…、9月中旬からだ。」

「分かった。」



大きく頷いた私に頷き返すと、源は踵を返して、給湯室を出て行った。

その時チラリと見えた源の表情は、苦渋に満ちていた。


源…?


やっぱり、何かあったんだ。


そう分かってはいるんだけど、敢えてそれを訊いたりはしない。

必要だと思えば言ってくれるだろうし、言わないってことは必要ないか、言いたくないか。


源が言ってくるまで…、それまで、私は待とう。



「課長、コーヒーどうぞ。」

「あぁ。」



オフィスに戻りコーヒーを渡した頃には、いつもの源に戻っていた。


源の海外研修行きは、8月終わりに発表されるらしい。


だけど、1ヶ月。

私が大阪に行っていた約半年に比べれば、遥かに短い。


大丈夫。
まだ少しトラウマだけど。

頑張れる、大丈夫。



そう言い聞かせて、私は仕事に没頭した。
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