あの加藤とあの課長
『9月の第一日曜に、入試があんだ。』

「うん。」

『で、陽萌の所泊めてくれねぇ?』

「え、家?」



キョトンとした私に、電話の主は「そう」と肯定を示す。

源を伺い見ると、“家”というワードに反応したらしく、何事かとこちらを見ている。



「他に当てはないの?」

『陽萌んとこが1番近い。』

「ちょっと訊いてみるね。」



そう言って、マイクの部分を押さえながら、源に尋ねるために、ソファへと移動した。



「あのね、家に泊りに来たいって言ってて。」

「誰が。」

「えと、弟。」

「……は?」



その時の源の顔は、まさに間抜け面。
逆に私の方が戸惑ってしまう。

あれ、言ってなかったっけ…?



「煌のことじゃないんだろ?」

「煌は、お兄ちゃんだもん。」



どうやら混乱している源に説明するのは時間がかかりそうだ。

そう踏んだ私は、一旦電話を切った。



「あのね、今高3の弟がいるの。帝(みがど)っていうんだけど…。」

「お前、弟もいたのか…。」

「うん。帝も煌に似てしっかりしてるんだよ。」



帝は私と煌と7歳離れた弟だ。
可愛いい可愛い弟。

性格も煌にソックリな、頼りがいのある性格。



「あ、でもね、顔は私と煌の間って感じ。」

「ふぅん…。」
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