あの加藤とあの課長
アワアワしながら寝室に向かい、源から預かった鞄を置いた。


それから帝をお風呂に案内して、タオルの説明なんかをした。

まあ、するほどの説明もないんだけど。



「陽萌。」

「ん?」



脱衣場を出ようとした私を、帝が呼び止める。

振り返ると、小舅と化した帝が思いきり顔をしかめていた。


そして私を引き寄せると、ギュッと抱き締める。



「俺、あの人やだ。」

「へ…。」



やだ?

突然の言葉に頭が着いていかなくて、暫し呆然とする。



「…嫌、って、源のこと?」



帝を見上げると、拗ねたような帝と目が合った。この顔、前にも見たことがある。

あれは、いつだったかな…。



「そう。やだ。」



そう言ってそっぽを向く。

私はそれに何も言い返すことができず、しょんぼりするしかできなかった。


キッチンに戻って途中だった料理を再開する。


いつ見たんだっけ。
そんなことばかりが気になる。



「どうした?」



料理をする私の目の前、ソファからカウンターに移動してきた源が首を傾げる。

片手にはビールを持っていた。



「……うん…。」
< 417 / 474 >

この作品をシェア

pagetop