あの加藤とあの課長
「だからシスコンになっちゃったんだろうなぁ。私も妹気質だからそのまま甘えちゃって。」



私もわりとブラコンなところがある。

小さい頃からの刷り込みというのは、なかなか恐ろしい効果を発揮するものだ。



「シスコン兄弟の審査を通った男はいないのか?」



ビールを呑みながら唐突にそう言う源に、目をパチクリする。

いつもなら絶対に出ない問いだ。



「あー…っと、1人だけ、いる、かな。」

「へぇ?」

「うん。」



ヤキモチ妬きの源のことだ。
誰とかは、言わない方が身のためだ。

そう思うものの、そんな思いは源の一言ですぐにどこへやら。



「三富か?」

「……。」



肩が思い切り跳ねてしまった。

源を伺うと、「そうか」と呟いたきり、ビールをゴクゴク呑んでいた。


煌の場合は認めても認めなくても放置だったんだけど、帝は認めないと無理矢理別れさせるから。

特に帝には彼氏を紹介しなかったな。


別れさせられたことも何度かあるけれど、唯一帝が認めたのが、恵也だった。



「あ…。」



思い出した。



「ん?」



首を傾げる源に、何でもないと首を振る。

思い出した事実に、思わず笑みが零れる。その笑顔はたぶん気持ち悪い。
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