あの加藤とあの課長
薬を飲むと、床に座っていた帝に合わせて床に座る。

それから、キッチンでいろいろと準備してくれている源を見やる。



「いつものやつ?」



コーヒーを飲んでいた帝が問い掛けてくる。

苦笑しながら肯定の意を示すと、すっと眉根を寄せて私を見る。



「大丈夫か?」

「うん。でも、明日見送りとかできないかも。」

「それは構わないけど…。」



なんて言いながらコーヒーに口をつける。

見送りどころか、朝食を作ってあげることすら危うい。



「陽萌。」



源が紅茶が入ったマグカップを持ってきてくれた。

源はコトリとテーブルにそれを置くと、私の両脇に手を差し込み、私の体を持ち上げた。



「ひゃっ、ちょ!」



慌てる私を余所に私をソファに降ろす。



「床に座ってたら、体が冷えるだろ。」

「う、うん…。」

「ん。」



大人しく頷いた私を確認すると、湯タンポを布団に入れるために寝室に入っていった。

ポカンとしていた帝は、我に返ったらしく。



「…あの人、すげぇ過保護。」

「あはは…。」

「ま、自分のことに無頓着な陽萌には、丁度いいくらいなのかもな。」

「…うん、私もそう思う。」



そう返した私に、帝はそっぽを向いてしまった。その顔はなんだか照れているようで。

やっぱり、可愛い弟だ。



「試験の結果っていつ出るの?」

「来週の金曜。」

「ドキドキするねー!」

「まだ受けてすらないけどな…。」



「そうだね」と笑う私の隣に、寝室から戻ってきた源が、腰掛けた。

それから少し3人で談笑してから、各々床に就いた。
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